室中之間は、芦雪の代表作として古来有名である障壁画「虎図」と「龍図」が座敷を挟み向かい合わせで見られます。襖から今にも飛び出さんばかりのダイナミックでユニークなこれら作品は、芦雪の非凡な才能を感じさせます。

室中之間

上間二之間:長沢芦雪筆

長沢芦雪筆:紙本墨画「虎図」襖6面(重要文化財)
右二面:各180.0×87.0cm 左四面:各183.5×115.5cm/天明6年(1786)

無量寺本堂室中之間・仏間の左側の襖絵で、天明6年初春滞在中の作。
画面右端に三角に尖った岩盤があり、そのかたわらから前を睨んで威嚇する虎の姿は、余白を意識させない迫力に満ちている。
また、前肢から胴体で、そして開き気味に踏ん張られた後肢へと視線を誘う弧状の概形は龍図との呼応を示すが、本図の場合は、虎の力を漲らせた様子を表現するうえで一層の効果を生んでいる。虎の躍動感こそが中心となり、大画面を最大限に活かした作品に仕上げられているところに特徴がある。
また、猛々しく獣性をそなえた虎には違いないが、一風、猫に対するような愛らしさを感じるのも本図の特徴で、それは、写実の限界を示すというよりも、動物を擬人化することに喜びを感じていたとさえ思える芦雪の個性の表れと見るべきであろう。
また、1981年にロンドン、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された「江戸大美術展」に出品され、日本水墨画の優品として海外での評価を高めた。その際、「虎図」は英国の有名セーターメーカーの限定50着のカシミヤセーターのデザインにもなった。長沢芦雪筆:紙本墨画「虎図」襖6面

上画像はデジタル再製画ではなく、重要文化財である原画。

微笑ましく賑やかな下間二之間の「唐子遊図」襖を開けると… 迫力に満ち、躍動感溢れる「虎図」が現れます。

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上間二之間:長沢芦雪筆

長沢芦雪筆:紙本墨画「龍図」襖6面(重要文化財)
右四面:各183.5×115.5cm 左二面:各180.0×87.0cm/天明6年(1786)

無量寺本堂室中之間・仏間の右側の襖絵で、天明6年(1786)初春滞在中の作。
「虎図」と対面する本堂東側の襖絵である。前足の爪と頭部のみを描き、画面の外に巨大な龍の全身を暗示し、襖全面に展開される奔流のような雲煙の墨色は、けだし現代のデカルコマニーの先駆といえよう。
長沢芦雪筆:紙本墨画「龍図」襖6面

上画像はデジタル再製画ではなく、重要文化財である原画。

なだらかな岸辺で憩う猫が描かれた上間二之間の「薔薇図」襖を開けると… 雲気をまとい睨みをきかせる「龍図」が現れます。

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