・作者一覧
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松村 外次郎(まつむら そとじろう)[1901 - 1990]
富山県生まれ。1929年東京美術学校彫刻科卒業。
吉田白嶺に木彫を学び、31ー33年渡仏、帰国後ニ科展に出品、36年ニ科会会員となる。戦後第二紀会創立に参加し以降彫刻部の中心となって、大ぶりの作品を連年発表。日本現代美術展、国際美術展などに招待出品。各地に記念碑を製作、中でも花巻温泉の「宮沢賢治"母子象"」が著名である。二紀会名誉会員。84年に富山県民文化会館於いて「回顧展」が開催された。
作品一覧
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松村外次郎作:モニューマン 覇空
木彫/23.4×22.4×20.0cm/1937
昭和36年(1961)二紀会15周年記念展出品の「鳳鳥至」の試作。台座の直線と曲線で単純化された鳳鳥の対比が美しい。
のちに続く「四神」の連作の一つ、朱雀である。
松村外次郎作:憩像
ブロンズ/H145cm/1963
茲にも夢があった。息遣いも静かな造型は又伴侶でもありましょう。
菱形というべきか三角形と称すべきかは第三者にお委せして、兎に角歪んだ三角の集合体です。造型の理論と築構の基本に従いました。
当然のこと乍ら腋下や下腿部にも三角形の隙間が生じています。それにもデリケートな美の介在が伴って、漸く立体的な造型が成立する筈であります。顧みて自賛の筆致、苦渋、汗冷。
(第18回二紀展出品)
松村外次郎作:樹の風
木彫/98×87cm/1966
この樹に限って息遣いともいふべきか生体感を訴えられている気がした。
過程では「速度」と「空間」に就いて自分には疎遠がちであった問題に素朴ながらの考察を要求するものがあった。
空間(動向:ムウブマン、速度:タイム)この数学用語が先行して型象も観念的?に移行するものもある。
* * * * * * * *
光琳の水の紋様が無限に流動し、
ゴッホの糸杉が炎々と燃へるのも亦
美しい空間と速度を教へてくれる、
西行法師の梢や木枯らしの歌を去來
させつつ樹の根を刻む、また空し。
(第21回二紀展出品)
松村外次郎作:背黒鷗
木彫/H38.5cm/1969
50年前後の古い話しである。房州勝浦でかもめを釣る仕掛を聞いた。
時化が続いて海面の荒れている折はかもめ自身も不漁で空腹に耐えている。この時機を狙って先ず煮干程度の餌を釣針に通し、釣糸は見えないように砂を掛けてカムフラージュする。釣糸が露出であったり人間の姿があっては、かもめさん用心して寄り付かないから物蔭に隠れて待機する。
以上は懐、不如意の漁師さんが玩具替りにこのかもめを子供に与え、子供はその脚に紐をつけて遊んだという。
話に牽かれた私は即座にかもめの入手を頼んだが、此の事を忘れかけた2年後漸くわが家に届いた。事実は話のようにはうまく運ばなかったがお陰で此の作品が生まれた。
鷗は躯も脚もスマートで美しい。瞳も亦つぶらに耀いて美しい。余計なことをしないように心懸けて全体をデフォルメした。
用材は檜です。その他の材料であったら脚が折れて製作用は不可能です。檜の持つ優美さと柔軟性は日本の誇る最高の品位のある良材です。
(木彫三人展出品)
松村外次郎作:如意
木彫/32×4cm/1971
「如意」は禅家で用いられる僧具の一つである。物事が我が意の如く自在になることをいう。まっすぐな一本の棒を渾身の力で曲げて引っつけたような強靭な造形、極度に単純化されて「如意」の本質に迫って豪宕である。
松村外次郎作:薬師如来図
陶器/径28.5cm/1975
彫刻家の引く描線には確実な存在感がある。
陶器の染付けの場合、呉須や藍はねばって筆にまとわりつく。それがかえって筆力をセーブして重厚な効果を生む。制作をはなれた手すさびでありながら仏の慈容をとらえ、双手の変化による遥らぐ動感が素晴らしい。
松村外次郎作:西行像作意
木彫/H43.2cm/1978
天空へ上昇るす線條論的構成が基調。
足の爪先は爽やかに踵は軽く浮き上がって構成の線條に添っています。
「笠」は地上の名詞、今は尊像の光背でありたい、が御本尊は歌に因む「夜桜の月」とお歓びであろうか? 杖は托生の伴侶、造型の安定を求める対角線ですが行脚のトレード・マークと併せて御納得を願う。 合掌。
松村外次郎作:エマージュ 熊谷先生
ブロンズレリーフ/32.5×27.9×55cm/1979
先生が逝去されてから1年後、その面影を偲ぶ祈念作。
資料のポートレイトにも、カメラマンの撮った写真には一応成程と得心はするが、目も鼻も口にも亦、額、顎、等々にも信用の出来得ないものが潜んでいるように思われた。私の欲求する大切なものが映っていないからではなかろうか、自分の表現力不足を棚上げをした僻み? 、疑心暗鬼と弱いことでした。
バックは御夫人の御諒承を得て先生の画趣を装飾的に配置した。その形態が単純化され、或は筆致の動勢化は私には程遠い彼岸であった。
(第34回二紀展出品)
松村外次郎作:玄武
ブロンズ/26.8×26.4×20.3cm/1980
中国の「四神」の一つ。亀と蛇の合体したもので、殷周の青銅器にその原形がみられる。円型に打ち抜かれた眼部と背面上部の空洞、そして軽くおさえた脚部に作者の思いが籠る。
造形の不思議を感じさせる作品である。
松村外次郎作:青竜
ブロンズ/右:24×24×13cm 左:21×24.7×13.2cm/1983
古来中国では青竜・白虎・朱雀・玄武を「四禽」又は「四神」と云い霊妙不可思議の動物とされている。仮象の造形は難しい。
空洞になっている眼の表現に作者の真意があると思われる。一対の緊密な構成によって飛昇の躍動感が強烈な印象を与える。